マレーシアの首都「クアラルンプール」に滞在して驚いたことは、多くの歴史的建造物が存在している点でした。
それらの多くが英国植民地時代に建てられ、チャイナタウン周辺を中心に街を歩けば築100年前後の建物が多く残り、イギリス人建築家の設計による建物が今でも街を彩っています。
今回はスルタン・アブドゥル・サマド・ビルなど主要観光地に加え、日本であまり取り上げられていないマイナーなもの、日本統治下で日本と関わりのあった建物など歴史的建造物を18ヵ所紹介します。なお、紹介する全ての建物が英国植民地時代に建設されたものになります。
クアラルンプールの歴史的建造物まとめ
1. スルタン・アブドゥル・サマド・ビル(旧連邦事務局ビル)
スルタン・アブドゥル・サマド・ビルは、1894年〜1897年にチャールズ・ミッチェル(Charles Mitchell)の命により建設されました。連邦事務局が置かれていたことから旧連邦事務局ビルとも言われています。英国のマレーシア統治における中心的な役割を果たし、独立広場に位置することから多くの観光客が訪れる人気スポットになっています。

2. 旧モスク(Masjid Jamek)
旧モスクは、1907〜1909年に建設されたクアラルンプール最古のモスク。英国植民地政府やマレー住民などが費用を負担して建設されました。イギリス人建築家「アーサー・ベニソン・ハバック」設計による特徴的な建物になっています。独立広場や駅から近く、こちらも観光客に人気の場所となっています。旧モスクに隠された“秘密”は以下をご覧ください。

3. セント・マリー聖堂(St Mary’s Cathedral)
セント・マリー聖堂は、1894年に建設された教会。エリザベス女王が参拝したこともある由緒ある場所になります。英国植民地政府や中国人実業家などの支援により建設されました。ヘンリー・ウィリス&サンズ製作のパイプオルガン(1895年製)が見所になります。

4. 旧クアラルンプール中央郵便局(Old General Post Office)
旧クアラルンプール中央郵便局は、1907年に建設された歴史的建造物。1984年までクアラルンプール中央郵便局として利用されていました。イギリス人建築家「アーサー・チャールズ・アルフレッド・ノーマン」などが設計を担当しています。スルタン・アブドゥル・サマド・ビルの真横にある建物で、違いを見比べてみるのがおすすめです。

5. クアラルンプール・シティ・ギャラリー(Kuala Lumpur City Gallery)
クアラルンプール・シティ・ギャラリーは1899年に建設され、政府関連の印刷物や鉄道のチケットなどを印刷する印刷事務所として利用されていました。その後は郵便局、公共図書館などとして利用され、現在は木工製品を手掛ける「ARCH」のギャラリーになっています。「I♥KL」のモニュメントが多くの観光客を引き寄せる人気スポットです。

6. 国立テキスタイル博物館(Muzium Tekstil Negara)
国立テキスタイル博物館は1905年に建設され、完成当初はマレー連合州鉄道の本社として利用されていました。1984〜2007年までは高等裁判所として利用され、2010年にテキスタイル博物館として一般公開されています。インド・サラセン様式などが取り入れられた建物は観光客に人気の撮影スポットにもなっています。

7. クアラルンプール旧市庁舎(Old City Hall of Kuala Lumpur)
クアラルンプール旧市庁舎は1896〜1904年に建設された、現在はシティ・シアターとして利用されています。アーサー・ベニソン・ハバックの設計でムーア様式などが取り入れられています。1992年の火災で損傷しましたが、その後再建されています。現在の市庁舎はこちらから約250メートル先に移動しています。

8. 旧最高裁判所ビル(Old High Court Building)
旧最高裁判所ビルは、1912〜1915年に建設された建物。1880年代に最初の最高裁判所が建設されましたが、裁判件数の増加に伴い、こちらに移されました。現在の最高裁判所はクアラルンプール近郊のプトラジャヤにあります。オジーアーチやドームが特徴的で、独立広場に近い歴史的建造物の穴場的存在です。

9. クアラルンプール旧中央駅(Kuala Lumpur Railway Station)
クアラルンプール旧中央駅は、1910年に建設された建物。アーサー・ベニソン・ハバックが設計を担当し、国の歴史的建造物にも指定されています。1986年には大規模な改修が行われています。イスラム、インド的要素が交錯する建物は一見の価値あり。セントラル駅に役目を渡しても、まだまだ現役です。

10. マレー鉄道事務局ビル(Malayan Railway Administration Building)
マレー鉄道事務局ビルは、1914〜1917年に建設されたマレーシア鉄道公社の本社。スルタン・アブドゥル・サマド・ビルから始まった記念建造物プログラムの最後の建物として建設されました。ゴシック様式のアーチが見所で、デザイン性の高さがポイントです。内部には入れませんが、外観だけでも見ておきたい建物です。

11. マレーシア・ツーリズム・センター(Malaysia Tourism Centre)
マレーシア・ツーリズム・センターは、1935年に建設された観光案内所。第二次世界大戦中は旧日本軍の本部として利用された歴史を持ちます。日本語などのパンフレットがあり、現在は観光情報を求める外国人観光客が多く訪れています。
12. ガレリ・タンシー(Galeri Tangsi)
ガレリ・タンシーは、英国人建築家の設計により、1907年に建設された歴史的建造物。錫鉱山で財を成したローク・チョウ・キット(Loke Chow Kit)が建てたことから、もともとはローク・ホール(Loke Hall)として知られていました。現在はカフェ「Fiftig Seofon」などが入っています。
アーサー・オークリー・コルトマン設計の建物
13. ウィスマ・エクラン(Wisma Ekran)
ウィスマ・エクランは、1937年に建設されたアール・デコ様式の建物。イギリス人建築家「アーサー・オークリー・コルトマン」が設計を担当。コルトマンはリー・ラバー・ビルディング、OCBCビルディングなど1930年代に建設された歴史的建造物の多くを手掛けています。筆者が写真を撮影した日は何かの撮影が行われていました。
14. オリエンタル・ビルディング(Oriental Building)
オリエンタル・ビルディングは、1932年に建設されたアール・デコ様式の建物。5階建てのビルは、建設当時クアラルンプールで最も高い建物でした。こちらもイギリス人建築家「アーサー・オークリー・コルトマン」が設計を担当。クアラルンプールにおけるアール・デコ様式の最高傑作との評価もあるほど、素晴らしい外観をしています。
15. メダン・パサール・クロック・タワー(Medan Pasar Clock Tower)
メダン・パサール・クロック・タワーは、1937年に建設された時計台。チャイナタウンに位置し、イギリスのジョージ6世の戴冠式を記念して建造されました。こちらもアーサー・オークリー・コルトマンが設計した建物になります。3階建ての歴史ある建物が広場を囲っており、夜になると幻想的な雰囲気になるため、夜景スポットとしてもおすすめです。
16. リー・ラバー・ビルディング(Lee Rubber Building)
リー・ラバー・ビルディングは、1930年に建設されたアール・デコ様式の建物。アーサー・オークリー・コルトマンが設計し、「ゴムとパイナップルの王」と呼ばれた「リー・コン・キアン」の会社が持ち主でした。建設当初はクアラルンプールで最も高い建物で、1942〜1945年には日本の憲兵隊本部として利用されていました。
その他歴史的建造物
17. コロシアム・シアター(Coliseum Theatre)
コロシアム・シアターは、1920年に建設されたマレーシアで最も古い映画館の一つ。アール・デコ様式で、マレーシア屈指の実業家「Chua Cheng Bok」によって建設されました。収容人数は900人で、当時はクアラルンプール最大の映画館でした。映画館は現在も使用されており、タミル語の映画を中心に上映されています。
18. ローク・マンション(Loke Mansion)
ローク・マンションは、1904年に建設された建物。錫鉱山で財を成したローク・ユー(Loke Yew)が所有し、イギリス領マラヤで最も早く電気が通った住居でもありました。第二次世界大戦中は日本軍の司令部が置かれ、その後は空き家などを経て、現在は法律事務所「Cheang&Ariff」が所有しています。
最後に
今回はマレーシアの首都「クアラルンプール」にある歴史的建造物を18ヵ所紹介しました。
基本的には築100年前後の建物が多く、スルタン・アブドゥル・サマド・ビルやクアラルンプール旧中央駅は特に評価の高い建物になります。
また、アール・デコ様式のビルなどはガイドブックなどであまり紹介されていないため、穴場の観光スポットとしておすすめです。
チャイナタウン周辺には多くの古い建物が残っていますので、クアラルンプール観光の際は歴史的建造物巡りをしてみてはいかがでしょうか。