マラッカは、マレーシア南西部に位置する歴史と文化が融合した世界遺産の街。オランダ広場やサンチャゴ門などの植民地時代の建築物、色鮮やかなチャイナタウン、伝統的なマレーシアの建造物や美しい川沿いの風景まで、多彩な見どころが徒歩圏内に広がっています。
当記事では、旅行者に人気のスポットを「エリア別」に整理しており、効率良く巡れる観光ルートの作成を手助けします。限られた時間でも主要な観光地を無駄なく楽しめるよう、各スポットの特徴なども詳しく解説。初めて訪れる方からリピーターの方まで、誰もが満足できるマラッカ観光のヒントをお届けします。観光の計画や街歩きの参考に、ぜひご活用ください。
マラッカについて
マラッカは15世紀初頭にマラッカ王国として成立し、東南アジアの重要な交易拠点として繁栄しました。特に、マラッカ海峡を通る交易路の要所として、中国やインド、アラブ諸国との商取引が盛んに行われ、多文化が交差する港町として発展しました。
1511年にはポルトガルによって占領され、約130年間にわたり植民地支配を受けました。その後1641年にはオランダに支配権が移り、オランダ東インド会社の拠点として要塞や行政施設が整備されました。1824年からはイギリスの統治下に入り、鉄道や港湾などのインフラが整備されました。
2008年にはマラッカの歴史地区がジョージタウンとともに「マラッカ海峡の歴史都市群」としてユネスコの世界遺産に登録され、その豊かな歴史遺産が現在も色濃く残っています。それでは、ここから「オランダ広場エリア」「セントポールの丘エリア」「ジョンカー・ストリートエリア」「その他エリア」の4つのエリアのおすすめ観光地を紹介していきます。
オランダ広場エリア
1. オランダ広場(Dutch Square)
オランダ広場はマラッカ観光の中心地。周囲にはオランダ統治時代に建てられたスタダイス、マラッカ・キリスト教会など赤いカラフルな建物があり、レッド・スクエア(Red Square)とも呼ばれています。
・広場にはその他見所も
広場にはマラッカ時計台(Melaka Clock Tower)、イギリス統治時代1901年に建設されたビクトリア女王噴水(Queen Victoria’s Fountain)のほか、「Melaka 0 Mile」のモニュメント、風車など多くの撮影ポイントがあります。なお、広場にはインフォメーションセンターがあり、地図や観光地の情報を得ることができます。
2. スタダイス(The Stadthuys)
スタダイスは、オランダ広場に位置する歴史的建造物。オランダ総督の公邸として1600年代半ばに建設され、建設当時から政治の中心的役割を担っていました。建物は1982年に歴史博物館に改装され、現在はマラッカ植民地時代の資料や文化遺産が展示されています。なお、マラッカ時計台もこちらの建物の一部として位置付けられているほか、東南アジア最古のオランダ建築とも言われています。
料金:12リンギット(5つの博物館と兼用)
住所:Jalan Gereja, Banda Hilir, 75000 Melaka(地図)
アクセス:オランダ広場からすぐ
3. マラッカ・キリスト教会(Christ Church Melaka)
マラッカ・キリスト教会は、オランダ植民地時代に建てられたキリスト教会。オランダがポルトガルに代わってマラッカを占領した1641年から100年後になる1741年に建設が計画され、1753年に完成しています。もともとは白い外観でしたが、1911年に現在の赤い外観に変更されています。内部は見所に乏しいですが、教会の床にはポルトガル語などで書かれた墓碑が組み込まれています。オランダ広場に位置する重要度の高い歴史的建造物になるため、訪れるべき観光スポットとして紹介しています。
料金:無料(寄付推奨)
住所:Gereja Christ, Jalan Gereja, Banda Hilir, 75000 Melaka(地図)
アクセス:オランダ広場からすぐ
4. セント・フランシス・ザビエル教会(Church Of St. Francis Xavier)
セント・フランシス・ザビエル教会は、19世紀半ばにフランス人司祭によって建てられたネオゴシック様式の教会。マラッカで3番目に古く、双塔式の建物はフランス・モンペリエ大聖堂をモデルに建てられたと言われています。内部に見所は特になく、敷地内にはザビエル、日本人「ヤジロウ」像があります。なお、教会は向かってやや右側に傾いています。
■ザビエルとヤジロウ像
5. ビクトリア要塞(Victoria Bastion)
ビクトリア要塞(写真左)は、海からの攻撃を防ぐ目的で造られた要塞で、ポルトガル統治時代に築かれたファモサ要塞の一部。セント・フランシス・ザビエル教会とマラッカ川の間に位置しています。なお、オランダ広場近くにあるミドルバーグ要塞(Bastion Middleburg)、ザ・ショア・ショッピング・ギャラリー近くにある1700年に建設されたセント・ローレンス教会跡(※写真右)など、マラッカには多くの遺跡が残されています。遺跡巡りもマラッカ観光の醍醐味になります。
セントポールの丘エリア
6. セント・ポール教会跡(St. Paul’s Church)
セント・ポール教会は、1521年にポルトガル人「ドワーティ・コエーリョ(Duarte Coelho)」によって建設された教会。その後、教会は1548年にイエズス会へ引き渡され、1556年に改築されました。しかし、オランダ統治時代には礼拝所として使用されなくなり、英国統治時代には弾薬庫などとして利用されていました。歴史とともに廃れていき、現在のような形になっています。
・ザビエルの遺体が一時的に安置された場所がある?
なお、フランシスコ・ザビエルはこちらを拠点の一部とし、日本や中国で布教(侵略)活動を行っていました。中国・上川島でザビエルが亡くなった際、遺体が一時的に安置されていた場所(写真右)でもあります。埋葬地としても利用されていたため、教会跡には墓石がいくつかあるほか、日本司教であった「ペドロ・マルティンス」もこちらで眠っています。
7. ファモサ要塞跡(A Famosa)
ポルトガル統治時代の1511年に築かれた要塞。多くの観光客が訪れる人気スポットで、現在はサンティアゴ門(Porta de Santiago)が唯一当時の面影を残しています。建設当時は5つの教会や4つの塔、病院、弾薬庫、行政機関などがあり、ポルトガルのマラッカ統治における中心地になっていました。オランダ統治時代の1670年に改装・再建されたものの、1806年頃にサンティアゴ門を除いて破壊されています。
・ここが見所!
門の上部にはオランダ東インド会社の紋章が刻まれ、門の枠の部分には「ANNO 1670」と刻まれています。
8. マラッカ・スルタン・パレスミュージアム(Melaka Sultanate Palace Museum)
マラッカ・スルタン・パレス・ミュージアムは、マラッカ王国の宮殿を復元した博物館。建設当時の建築技術、材料が用いられ、マラッカ王国が繁栄していた15世紀、スルタン・マンスール・シャー(Sultan Mansur Shah)の宮殿が復元されています。当時の王族の暮らしぶりや王国の生活文化、儀式道具、木工・織物など工芸品などを通して、マラッカ王国当時の歴史や文化などを学ぶことができます。
ジョンカー・ストリートエリア
9. ジョンカー・ストリート(Jonker Street)
ジョンカー・ストリートは、マラッカのメインストリートとも言える通り。チャイナタウンに位置し、正式名称はハン・ジェバット通り(Jalan Hang Jebat)。レストランやギフトショップ、アートギャラリー、衣料品店などが軒を連ねており、マラッカ名物「チキンライスボール」が食べられる店として人気の「Hoe Kee Chicken Rice Ball」などもあります。
・ナイトマーケットで賑わう
特に、金曜日、土曜日、日曜日に開催されるナイトマーケットで知られており、開催日には多くの人で賑わっています。マラッカ観光の際は、ぜひ週末に訪れることをおすすめします。
10. チャイナタウン(Chinatown)
ジョンカー・ストリート周辺、ブンガ・ラヤ通り(Jalan Bunga Raya)一帯がマラッカのチャイナタウン。マラッカのチャイナタウンはマレーシアで最も古く、1400年頃に形成された歴史を持ちます。朝貢や貿易で中国・明との関係を深めるなか、チャイナタウンも発展していきました。
1600年代半ばに建設されたマレーシアで最も古い仏教寺院「チェン・フー・テン寺院」、風情のあるトゥカン・ベシ通り(Jalan Tukang Besi)、カンポン・クリ通り(Jalan Kampung Kuli)などがおすすめの観光スポットになります。なお、建物の正面上部に建てられた年が書かれているので、それらを確認しながら歩くと街歩きがもっと楽しくなりますよ!
11. ババ・ニョニャ・ヘリテージ・ミュージアム(Baba And Nyonya Heritage Museum)
ババ・ニョニャ・ヘリテージ・ミュージアムは、1896年に建設されたタウンハウスを改装した博物館。15世紀辺りから移住してきた中華系住民の子孫「ババ・ニョニャ(プラナカン)」家庭の実際の住居を復元・展示しており、色彩豊かな装飾、精巧な木製家具、繊細な陶磁器や刺繍品など、プラナカン文化の生活様式をリアルに感じられます。
12. チェン・フー・テン寺院(Cheng Hoon Teng Temple)
チェン・フー・テン寺院は、1646年に建設されたマレーシアで最も古い中国仏教寺院。華人を統括するカピタン「Tay Kie Ki」などが建設し、寺院建設には中国から建材が運ばれ、職人についても中国南部から呼び寄せられています。
・お参りすると御利益あり?
風水に従って造られているため、パワースポット的な場所としてお参りすると御利益があるかもしれません。なお、カンポン・クリン・モスク、マレーシア最古のヒンドゥー教寺院が同じ通りにあるため、通りは「ハーモニー・ストリート」とも呼ばれています。
13. カンポン・クリン・モスク(Masjid Kampung Kling)
カンポン・クリン・モスクは、1748年にインド系ムスリム商人によって建設されたモスク(スンニ派)。1872年に木造からレンガ造りの建物に再建されています。スマトラ、マレー、中国、ヒンドゥーといった多様な建築様式が融合しており、三段重ねの緑屋根やパゴダ風のミナレットが印象的です 。1990年代の修復後、歴史的建造物として認定され、現在も礼拝所として使用されつつ観光客にも人気の観光スポットです。
14. カンポン・フル・モスク(Masjid Kampung Hulu)
カンポン・フル・モスクは、1720〜1728年の間に建てられたマラッカ最古のモスク。オリジナルは木造でしたが、1892年に現在のコンクリート製の建物に再建されています。ジャワ建築を思わせる三層屋根と中国風装飾が融合された独自デザインで、パゴダ型ミナレットや石・レンガ造りの頑丈な構造が特徴的です。
その他エリア
15. マラッカ川(Malacca River)
マラッカ川は、マラッカ旧市街を流れる歴史ある川で、かつては東西貿易の重要な水路として栄えました。現在はカフェ、カラフルな壁画が並ぶ美しい景観が魅力で、観光名所の一つになっています。川沿いの遊歩道を歩くことができるほか、リバークルーズでは植民地時代の建物やモスク、地元の住宅街などを川から眺めることができ、昼夜問わず楽しめる人気アクティビティになっています。
16. マラッカタワー(Malacca Tower)
マラッカタワーは、2008年4月にオープンした高さ110メートルの回転式展望タワーです。塔の展望キャビンは地上から約80メートルまで上昇しながら360度回転し、7分間のクルーズで最大66名が同時に乗車可能。マラッカ海峡、セントポールの丘、チャイナタウンなどマラッカの街が一望できます。家族連れやカップルなど幅広い層に支持されている観光スポットです 。
17. マラッカ海洋博物館(Muzium Samudera)
マラッカ海洋博物館は、1994年にオープンした海洋博物館。略奪品を積んでマラッカ海峡で沈没したポルトガル船「フロール・デ・ラ・マール号」を復元した実物大模型を展示する博物館で、マラッカ川沿いに位置しています。館内には当時の航海用具や模型など、貿易と海洋の歴史を物語る資料が展示されています。また、船のデッキに上がることができるため、家族連れの方におすすめしたい観光スポットです。
18. マラッカ海峡モスク(Melaka Straits Mosque)
マラッカ海峡モスクは、人工島「プラウ・マラッカ」に位置するモスク。2003〜2006年に建設され、海の上に造られていることから水上モスクとも呼ばれています。また、海とモスクのコントラストの美しさから写真撮影場所としても人気です。
・無料ガイドの方がイスラム教について教えてくれる?
高さ30メートルのミナレット(塔)がありますが、内部の見所はほぼありません。そのため、水上に浮かぶモスクの写真を撮影するためだけに訪れるモスクだと言えます。なお、ガイドの方がイスラム教について熱心に教えてくれるため、イスラム教への理解を深めたい人にもおすすめです。
19. セント・ピーターズ教会(St. Peter’s Church, Melaka)
セント・ピーターズ教会は、1710年に建設された教会。ポルトガル人移住者の子孫によって建てられたマレーシアで最も歴史のあるカトリック教会になります。教会内の床には18世紀以降に建てられた14基の墓石があります。そのほか、1608年にインド・ゴアで鋳造された鐘などが見所になります。
料金:無料
住所:166, Lorong Bendahara, Kampung Bukit China, 75100 Melaka(地図)
アクセス:オランダ広場から徒歩14分
20. ヴィラ・セントーサ(Villa Sentosa)
ヴィラ・セントーサは、1920年代に建設されたマレー建築の住居、家具、衣類、織物などが公開されている私設博物館。マレー民族博物館(The Malay Living Museum)とも呼ばれています。実際の住居はここまできれいではないと思いますが、高床式住居の下の部分がどのようになっているか、家具類などは見る価値があり、おすすめしたい観光スポットの一つです。
なお、伝統的なマレー様式の住居が軒を連ねるカンポン・モーテン(Kampung Morten)に位置しており、周辺の建物を見ているだけでも面白いため、マラッカ観光の際はぜひ訪れてみてください。
料金:無料(寄付制)
住所:Lorong Tun Mamat 1, Kampung Morten, 75300 Melaka(地図)
アクセス:オランダ広場から徒歩15分
滞在後記
ポルトガル、オランダ統治時代の建物、遺跡が多く残る歴史都市マラッカは滞在して良かったと心から思える場所でした。観光客は思ったほど多くなく、どの観光地もスムーズに巡ることができた点は評価ポイントです。また、物価はクアラルンプールより安く、気に入ったお土産があれば、マラッカで購入することをおすすめします。
個人的には、セント・ポール教会跡からファモサ要塞跡にかけてのアトラクション感、ヴィラ・セントーサがあるカンポン・モーテンが思い出に残りました。さらに、セント・フランシス・ザビエル教会で「ヤジロウ」さんについて知ることができた点は良い発見でした。
クアラルンプールからバスで2時間前後、約450円(片道)で行けるため、日帰りでもマラッカを訪れてみてください。きっといい思い出になると思います。なお、今回紹介したおすすめの観光スポットの場所は以下のグーグルマップで確認してください。