ウィーンでアドルフ・ロース設計の建物を見よう!
アドルフ・ロースが手掛けたモダニズム建築の重要な作品とは?その建物はフランツ・ヨーゼフ1世に嫌われていた?!湾曲した屋根が特徴的な建物なども紹介しています!
今回はオーストリアの首都「ウィーン」にあるアドルフ・ロースが手掛けた建築物を紹介します。筆者が撮影した写真も掲載していますので、建築に興味のある方もない方もぜひ最後までご覧ください。
※プラハにあるアドルフ・ロース設計の建物「ミュラー邸」については、以下の記事をご覧ください。

アドルフ・ロース(Adolf Loos)について
アドルフ・ロース(1870年〜1933年)は、オーストリア=ハンガリー帝国のブルノ(現在のチェコ)出身の建築家で、近代建築の先駆者の一人と言われています。
1890年〜1893年にかけてドレスデン工科大学で構造工学を学んだ後、叔父を頼ってアメリカに渡り、シカゴの高層ビル群に影響を受ける中、家具の製図家や建築家として働いています。1896年にウィーンに帰国し、建築家及びジャーナリストとして仕事をスタートさせ、ウィーン分離派に関する批評等を行うなどウィーン分離派及びウィーン工房の装飾性を非難していきます。
代表作になるロースハウス(1909年〜1912年)を手掛けた後、多くの建築物を設計していきます。ウィーンで住宅プロジェクトを手掛けた後、1924年から1928年までフランス・パリに居住し、パリにも作品を残しています。1933年に脳卒中を患い、ウィーン郊外で亡くなっています。
今回はオーストリアの首都「ウィーン」にあるアドルフ・ロース設計の建築物5選を紹介します。
アドルフ・ロース設計の建築物5選
1. ロースハウス(Looshaus)
ロースハウスは、1909〜1912年に建設されたウィーンのモダニズム建築の重要な作品の一つ。ウィーン中心部にあるミヒャエル広場に位置しています。ウィーン分離派のような装飾が排除されたデザインが特徴。その一方、贅沢な素材が使用されており、低層階部分にはギリシャのエヴィア島産のチポリーノ大理石が使われています。
■ハプスブルク家の紋章
建物にはこちらのハプスブルク家の紋章が飾られていますが、オーストリア皇帝「フランツ・ヨーゼフ1世」はこの前衛的な建物を嫌い、ミヒャエル広場の使用を避け、広場に面した窓にカーテンをしておくように命じたとも言われています。
※宝飾品、ギフトショップがあり、訪問可能です。
2. シュタイナー邸(Haus Steiner)
シュタイナー邸は、ヒューゴ・シュタイナー、画家のリリー・シュタイナー夫妻の別荘として1910年に建てられた重要な近代建築の一つ。ロースの機能主義的建築理念を体現した初期の傑作であり、装飾を排したシンプルな外観と空間構成という立体的な空間設計が特徴。湾曲した屋根が目を引きますが、同様の屋根はこれから紹介するシュトラッサー邸でも見られます。
※私邸のため、一般公開はされていません。
3. シュトラッサー邸(Haus Strasser)
シュトラッサー邸は、アドルフ・ロースが1918〜1919年にかけて改装を担当した建物(1896年完成)。皮なめし工場の経営者だったカール・シュトラッサー(Karl Strasser)が依頼し、内部構造などが大幅に変更されています。建物正面は左右非対称で、入口も正面中央ではなく左端に配置されています。凸凹の立体感なども特徴です。冬場は写真のような外観ですが、夏場になると緑のツタで覆われます。
※私邸のため、一般公開はされていません。
4. ショイ邸(Haus Scheu)
ショイ邸(Haus Scheu)は、弁護士のグスタフ・ショイ(Gustav Scheu、1875〜1935年)のために、1912〜1913年に建てられた別荘。ロースがウィーンで設計した最初の一戸建て住宅で、後のモダニズム建築に大きな影響を与えた作品と言われています。外観は白い漆喰壁にシンメトリーな窓配置、バルコニーやテラスを持つ直方体のフォルムで、装飾を排したシンプルなデザインが特徴です。なお、建物はシェーンブルン動物園近くに位置しています。
※内部見学不可。
5. ルーファー邸(Haus Rufer)
ルーファー邸(Haus Rufer)は、砂糖輸入業者のヨーゼフ・ルーファー(Josef Rufer)、妻マリーのために、1922年に建てられた住宅。第一次世界大戦後にロースが手掛けた最初の住宅建築であり、彼の空間設計理念「ラウムプラン(Raumplan)」が本格的に導入された初期の代表作とされています。彫刻家のテオドール・フリードル(Theodor Friedl、1842〜1900年)が手掛けた彫刻が特徴的ですが、建物の漆喰と共に劣化が目立っていました。
※内部見学不可。
番外編
■アメリカンバー(American Bar)
アメリカンバーは、ウィーン国立歌劇場とシュテファン大聖堂を結ぶケルントナー通りの脇道にあるバー。1908年にアドルフ・ロースが設計を担当しています。
■マンツ書店(Buchhandlung Manz)
マンツ書店は、ウィーンのブランド店街「コールマルクト(Kohlmarkt)」に位置する大学の書店。アドルフ・ロースが1912年に書店の入口、上階のオフィスの設計を手掛けています。
最後に
ロースハウスや番外編として紹介したアメリカンバー、マンツ書店はウィーン観光の中心地にあるため、滞在時間にゆとりの無い方でも気軽に訪問することができます。
シュタイナー邸、シュトラッサー邸、ショイ邸、ルーファー邸については中心部から若干離れた場所にありますが、シェーンブルン宮殿近くに位置していますので、写真を見て興味を持たれた方はシェーンブルン宮殿を訪れた次いでに立ち寄ってみてください。
そのほか、ウィーンにはオットー・ワーグナー、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーなどが設計した見逃せない建築物が数多く残っています。注目の建築物を以下の記事にまとめていますので、興味のある方はご覧ください。

なお、今回紹介したアドルフ・ロースが設計した建物の場所は以下のグーグルマップをご覧ください。