ヴィクトール・オルタ(Victor Horta、1861〜1947年)はベルギー第3の都市「ヘント」生まれの建築家、フリーメイソン。アール・ヌーヴォー建築の父とも呼ばれ、ブリュッセルで手掛けた4つの建築物が世界遺産に登録されています。
世界遺産に注目が集まりがちですが、今回はオルタが手掛けた「世界遺産以外」の注目すべき建築物を10ヵ所紹介します。ブリュッセル中央駅、ベルギー漫画センターなど観光客に馴染み深い場所も含まれていますので、ぜひ観光の参考にしてみてください!
なお、オルタが手掛けた世界遺産については以下の記事をご覧ください。
ヴィクトール・オルタが手掛けた建築物10選!
1.ブリュッセル中央駅(Gare de Bruxelles-Central)
1952年10月に開業した中央駅。ブリュッセル南駅(Gare de Bruxelles-Midi)、ブリュッセル北駅(Gare de Bruxellles-Nord)と並ぶブリュッセルの主要駅の一つ。
ヴィクトール・オルタは1910年に中央駅の設計を委託されますが、建設計画は第一次世界大戦、第二次世界大戦により大きく遅れることになります。オルタは1947年に亡くなりますが、デザインの大部分は1930年代に完成しており、その後はオルタの教え子「マキシム・ブランフォート(Maxime Brunfaut)」が計画を引き継ぎ、駅を完成させています。
住所:Carrefour de l’Europe 2, 1000 Bruxelles(地図)
ホームページ:http://www.belgianrail.be/
2.ベルギー漫画センター(Centre Belge de la Bande Dessinée)
1903〜1906年に建設されたアール・ヌーヴォー様式の建物。百貨店として建設された後、修復を経て1989年10月にベルギー漫画センターとしてオープンしています。エントランスの階段、ガラス天井などが見所です。ベルギーの人気漫画「タンタンとスノーウィ」に関する書籍、グッズなども販売されています。ショップには無料で入れるので、雰囲気だけでも楽しむことができます。
料金:大人10ユーロ
住所:Rue des Sables 20, 1000 Bruxelles(地図)
アクセス:地下鉄2、6番線「Rogier」駅から徒歩8分
ホームページ:https://www.comicscenter.net/en/
3.ドプレ・ヴァン・ド・ヴェルデ邸(Hôtel Deprez-Van de Velde)
1895〜1896年に建設されたジョルジュ・ドプレ(Georges Deprez)と妻ヴァン・ド・ヴェルデ(Van de Velde)の邸宅。アール・ヌーヴォー様式。ジョルジュ・ドプレはクリスタルガラスメーカー「ヴァル・サン・ランバート(Val Saint-Lambert)」の社長を務めた人物。こちらの建物は、オルタが手掛けた世界遺産「ヴァン・エドヴェルド邸(Hôtel van Eetvelde)」の向かいに位置しています。
4.マックス・ハレット邸(Hôtel Max Hallet)
1903〜1906年に建設された政治家・マックス・ハレット(Max Hallet)の邸宅。アール・ヌーヴォー様式で、1975年10月に歴史的記念物に認定されています。2001年、2007年に修復工事が行われているため、建物の外観は非常にきれいです。鉄製のバルコニー、窓枠、格子と白い自然石とのコンビネーションが見所になります。現在はイベント会場などとして利用されています。
アクセス:トラム93、94番線「Vleurgat」駅から徒歩3分
ホームページ:http://www.events-at-horta.be/
5.サンダー・ピエロン邸(Maison Sander Pierron)
1903年に建設されたサンダー・ピエロン(Sander Pierron)の邸宅(写真中央)。アール・ヌーヴォー様式。サンダー・ピエロンはオルタの友人であり、作家、ジャーナリスト、美術評論家などとして活躍した人物。オルタの作品ではあまり見ない赤レンガが使用されている点が特徴です。建物上部の突き出た窓も大きな特徴になります。
6.ピエール・ブラッケ邸(Maison-atelier du sculpteur Pierre Braecke)
1901〜1903年に建設された彫刻家「ピエール・ブラッケ(Pierre Braecke)」の邸宅。アール・ヌーヴォー様式。ピエール・ブラッケはオルタの友人。こちらの建物は1997年12月に歴史的記念物に認定されています。向かって右側の最上階が製図などを行うスタジオとして利用されていました。
7.ヴィンク邸(Maison Vinck)
1906年に建設された政治家・エミール・ヴィンク(Emile Vinck)の邸宅。アール・ヌーヴォー様式。元々は2階建てでしたが、1927年に3階部分のフロア増築が行われています。
8.オートリック邸
1893年に建設されたフリーメイソンのウジェーヌ・オートリック(Eugène Autrique)の邸宅。アール・ヌーヴォー様式の初期段階でもあり、窓フレームなどが興味深いです。一般に公開されているため、内部見学ができる貴重な建物の一つです。
料金:7ユーロ
住所:Chaussée de Haecht 266, 1030 Schaerbeek(地図)
アクセス:トラム92番線「Église Saint-Servais」駅から徒歩1分
9.カトー幼稚園(Ecole maternelle Catteau-Victor Horta)
1897〜1900年に建設されたアール・ヌーヴォー様式の建物。現在は幼稚園などとして利用されています。オルタが手掛けた唯一の公共施設になり、建物の前には英語、フランス語などによる説明書きがあります。
アクセス:トラム92、93番線「Poelaert」駅から徒歩8分
10.人間情熱のパビリオン(Pavillon des Passions Humaines)
1897年のブリュッセル万国博覧会に向けて建設された新古典主義建築の建物。サンカントネール公園内に位置し、アントワープの彫刻家「ジェフ・ランボー(Jef Lambeaux)」の作品等が収められています。
料金:10ユーロ(ガイド付き)
住所:Le Pavillon des Passions Humaines, 1000 Bruxelles(地図)
アクセス:地下鉄1、5番線「Schuman」駅から徒歩6分
ホームページ:http://www.kmkg-mrah.be/
その他オルタ設計の建物について
- Anciens Magasins Hiclet(Rue Neuve 20, 22)
- Anciens Magasins Wolfers frères(Rue d’Arenberg 11-13)
- Hôtel Roger-Verstraete(Avenue Louise 459)
- Hôtel Winssinger(Rue de l’Hôtel des Monnaies 66)
- Maison-atelier du sculpteur Fernand Dubois(Avenue Brugmann 80)※キューバ大使館
- Maison Frison(Rue Lebeau 37)
- Palais des beaux-arts de Bruxelles(Rue Ravenstein 23)
※詳しい場所についてはページ下のグーグルマップを確認してください(青色)。
滞在後記
上記のヴィクトール・オルタが手掛けた建築物を巡って印象に残った建物はブリュッセル中央駅になります。重厚な外観のみならず、床や天井の装飾などが目を引き、個人的に好きな建物の一つです。観光客がよく利用する駅であり、グラン・プラスから近いことも好ポイントになります。
そのほか、オートリック邸(Maison Autrique)、サンダー・ピエロン邸についても興味深く、双方ともにその他オルタの設計する建物とは違った特徴を持っているため、外観の見学だけでも見応えがありました。
筆者は2日に分けてこれらの建築物を巡りましたが、グーグルマップの通り建物は広範囲に散らばっています。その他アール・ヌーヴォー建築も同時に巡ろうとすると、1〜2日では無理なほど魅力的な建築物があります。訪問される際は日程に余裕を持たせるか、建築物を絞って訪問されることをおすすめします。
ブリュッセル観光でヴィクトール・オルタ設計の建築物巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。きっと一味違った観光が楽しめるはずですよ!
※ヴィクトール・オルタが手掛けた建築物の場所は以下のグーグルマップにまとめています。世界遺産は赤、世界遺産以外は青色になります。