ウィーンのレオポルド美術館はクリムトとシーレ天国だった?!
人集りができていたクリムトの作品は何?シーレは風景画も必見?「画家の王」と呼ばれクリムトに影響を与えた画家の作品とは?
今回はオーストリアの首都ウィーンにあるレオポルド美術館を紹介します。見所はオーストリアを代表する画家のグスタフ・クリムトとエゴン・シーレですが、そのほか見逃せない画家の作品も紹介していきます。筆者が実際に訪れた感想も記載していますので、これから訪れる方は参考にしてください!
レオポルド美術館(Leopold Museum)について
レオポルド美術館は2001年に開館した美術館で、オーストリアの現代美術が最大の見所です。オーストリアの美術コレクターのルドルフ・レオポルド(1925年〜2010年)と妻のエリザベートが収集した5000点以上のコレクションが礎になっています。コレクションの核はグスタフ・クリムトとエゴン・シーレで、特にエゴン・シーレのコレクションは世界最大を誇っています。
美術館のメインは4〜5階(現地表記では3〜4階)で、4階にシーレ、5階にクリムトが展示されていました。クリムトの傑作「死と生」の前には4〜5人ほどの人集りができていましたが、少し待てば人はいなくなり、基本的にはゆっくりと絵画を楽しむことができる状況でした。
そのほか、オットー・ワーグナーやアドルフ・ロースなどが設計した家具類も見所で、個人的にはヨーゼフ・ホフマンが設計したグラスや家具などが良かったです。彼らの設計した建物を見た上でこちらの美術館を訪れると、より感動が増すと思います。
なお、平日は人が少なく、チケット売場も空いています。ゆっくりとオーストリアの芸術に触れたい方におすすめしたい美術館になります。それでは、これからレオポルド美術館で見逃せない画家10名と絵画以外の見所をお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
オーストリアの巨匠2名
1.グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)
■グスタフ・クリムト作「死と生」
グスタフ・クリムト(1862年〜1918年)はオーストリアを代表する画家の一人。代表作にベルヴェデーレ宮殿で展示されている「接吻」など。レオポルド美術館に展示されている写真の「死と生(1910年〜1911年に製作)」も必見。クリムトはウィーンのギフトショップに立ち寄ると、確実に関連するお土産があるというほどの人気です。
■グスタフ・クリムト作「大きなポプラⅡ」、「リッツルベルガー ケラー」
「大きなポプラⅡ」は1902年〜1903年に製作された作品、「リッツルベルガー ケラー」は1915年〜1916年に製作された作品になります。
■グスタフ・クリムト作「紫色のスカーフの婦人」、「The Blind Man」
レオポルド美術館ではクリムト作の肖像画も見ることができます。「紫色のスカーフの婦人」は1880年〜1882年に製作された作品、「The Blind Man」は1896年に製作された作品になります。
2.エゴン・シーレ(Egon Schiele)
■エゴン・シーレ作「ストライプのシャツを着た自画像」
エゴン・シーレ(1890年〜1918年)もオーストリアを代表する画家の一人。スペインかぜによって28歳の若さで亡くなっています。独自の世界観を持った作風が魅力で、唯一無二の作品達は多くの人を魅了しています。なお、写真の「ストライプのシャツを着た自画像」は1910年に製作された作品になります。
■エゴン・シーレ作「川沿いの家の壁」、「The Blind Ⅱ」
「川沿いの家の壁」は1915年に製作された作品、「The Blind Ⅱ」も1915年に製作された作品になります。
その他見逃せない画家
3.ハンス・マカルト(Hans Makart)
■ハンス・マカルト作「黒いガウンの女性」(1873年製作)
ハンス・マカルト(1840年〜1884年)はオーストリア・ザルツブルク出身で「画家の王」と呼ばれ、グスタフ・クリムトに影響を与えた人物。代表作に「カール5世のアントワープ入城」などがあります。
4.オイゲン・イェッテル(Eugen Jettel)
■オイゲン・イェッテル作「ひまわりのある庭」(1885年製作)
オイゲン・イェッテル(1845年〜1901年)はウィーン分離派の設立メンバーの一人。ウィーン美術アカデミーで絵画を学び、多くの風景画を残しています。「ひまわりのある庭」はとても綺麗で、絵を見ただけでこの人は別格だと感じることができると思います。
5.アントン・ロマコ(Anton Romako)
■アントン・ロマコ作「イザベラ・ライサーの肖像画」(1885年製作)
アントン・ロマコ(1832年〜1889年)はウィーン出身の画家。フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラーから絵を学び、イタリア・ローマに渡って活躍。その後ウィーンに戻りますが、画家の王「ハンス・マカルト」が君臨していたため、注文が回ってこず、肖像画を製作することで生計を立てていました。
6.エルンスト・クリムト(Ernst Klimt)
■エルンスト・クリムト作「オランダの伝統衣装を着た父親」(1892年製作)
エルンスト・クリムト(1864年〜1892年)はグスタフ・クリムトの弟です。1881年に兄のグスタフ・クリムトなどと「Künstler-Compagnie(芸術家カンパ二ー)」を設立、ウィーンのブルク劇場の天井のフレスコ画などを手掛けました。エルンストはザルツブルク郊外にあるモンゼー城の天井画等も手掛けています。
7.リヒャルト・ゲルストル(Richard Gerstl)
■リヒャルト・ゲルストル作「予備役中尉アロイス・ゲルストルの肖像画」(1906年製作)
リヒャルト・ゲルストル(1883年〜1908年)はウィーン出身の画家。ユダヤ人の裕福な商人の子として生まれ、ウィーン美術アカデミーでクリスティアン・グリーペンケールに師事。作曲家アルノルト・シェーンベルクの妻と不倫関係に陥った後、自殺しています。
8.エミール・ヤーコプ・シンドラー(Emil Jakob Schindler)
■エミール・ヤーコプ・シンドラー作「シェルフリング近くの林道」(1890年製作)
エミール・ヤーコプ・シンドラー(1842年〜1892年)は、ウィーン出身の情趣的印象主義を代表する画家の一人。ウィーン美術アカデミーで学び、1887年にはオーストリア皇太子「ルドルフ」の依頼により、ギリシャのケルキラ島などの風景画を描いています。
9.ティナ・ブラウ=ラング(Tina Blau-Lang)
■ティナ・ブラウ=ラング作「リンゴの花」(1894年製作)
ティナ・ブラウ=ラング(1845年〜1916年)はウィーン生まれの女性画家。エミール・ヤーコプ・シンドラーなどから絵画を学び、風景画を得意としていました。
10.テオドール・フォン・ホルマン(Theodor von Hörmann)
■テオドール・フォン・ホルマン作「ラ・マドレーヌの花市場IV」(1889年製作)
テオドール・フォン・ホルマン(1840年〜1895年)はオーストリアの画家。ウィーン美術アカデミーでアンゼルム・フォイエルバッハなどに師事。風景画を中心に作品を残しています。写真の「ラ・マドレーヌの花市場IV」はパリに住んでいた際に製作した作品になります。
絵画以外の見所
オットー・ワーグナー(Otto Wagner)
オットー・ワーグナー(1841年〜1918年)はオーストリアの建築家で、ウィーン分離派の中心人物の一人。ウィーン郵便貯金局、マジョリカハウスなど多くの作品を残しています。また、オットー・ワーグナーは机や椅子なども設計しており、写真はワーグナーが設計したウィーン郵便貯金局の机とスツールになります。
コロマン・モーザー(Koloman Moser)
コロマン・モーザー(1868年〜1918年)はウィーン出身の芸術家。ウィーン分離派の一人で、家具や食器、ステンドグラス、ポスターなど幅広い分野でデザインを手掛けました。写真はコロマン・モーザーがデザインしたシュタインホーフ教会(オットー・ワーグナー設計)のステンドグラスになります。
基本情報
レオポルド美術館 | |
営業時間 | 10:00〜18:00(基本的には毎日営業) |
料金 | 15ユーロ |
住所 | Museumsplatz 1, 1070 Wien(地図) |
最寄り駅 | 地下鉄U2「Museumsquartier」駅、地下鉄U3「Volkstheater」駅 |
公式サイト | https://www.leopoldmuseum.org/ |
■所在地(マップ)
最後に
2階(現地表記では1階)にミュージアムショップがあり、クリムトや美術館に関する本、アクセサリー類、クリムト系のお土産(マグカップ、ペンケース、コースターなど)、ポストカード、ポスター、鉛筆などが販売されていました。
グスタフ・クリムト、エゴン・シーレともに好きな方には天国のような場所になると思います。筆者はクリムト目的で訪問しましたが、ヨーゼフ・ホフマンなどがデザインしたグラスが綺麗に展示されていたことがとても印象に残りました。
チケットはクリムト目的でも、シーレ目的でも妥当な値段だと思います。また、その二人以外でも良い絵画が揃っているので、オーストリア芸術に触れることができる満足度の高い美術館としてみなさんにおすすめしたいです。ウィーン観光の際はぜひレオポルド美術館を訪れてみてください!