ベルギーの首都「ブリュッセル」には3つの世界遺産があります。
今回はその3つに加え、世界遺産登録前の暫定リストに掲載されている2件についても紹介します。実際に訪問した感想を踏まえて評価していきますので、ぜひブリュッセル観光の参考にしてください。
なお、ブリュッセル郊外の「ソワーニュの森」が世界自然遺産として登録されていますが、今回は文化遺産のみ紹介していきます。
ブリュッセルの世界遺産
1.グラン・プラス(La Grand-Place)
1998年にユネスコの世界遺産に登録された広場。ブリュッセル観光の中心地になり、有名な小便小僧はこの広場から徒歩4分の位置にあります。広場は12世紀頃からの起源を持ち、1695年のフランス軍の砲撃で多くの建物が破壊されましたが、その後再建されています。広場にある多くの建物はその際に再建されたものになります。
見所は中世から残る市庁舎のほか、ネオゴシック様式の王の家、金装飾が美しいギルドハウス群になります。ギルドハウスが一番の見所ですが、王の家は周囲の建物とは異質で、広場の魅力を高めているように感じました。
なお、こちらの広場にはチョコレートで有名なゴディバの本店があります。ホットチョコレートは3.5ユーロ〜になります。寒いシーズンに観光する際はホッと一息つける絶好の場所ですよ。
2.建築家ヴィクトール・オルタの主な都市邸宅群
ヴィクトール・オルタ(Victor Horta、1861〜1947年)はアール・ヌーヴォー建築の父と称されるベルギー人建築家です。
オルタがブリュッセルで手掛けたアール・ヌーヴォー建築のうち、タッセル邸(Hôtel Tassel)、ソルベイ邸(Hôtel Solvay)、ヴァン・エドヴェルド邸(Hôtel van Eetvelde)、オルタ邸(Maison & Atelier Horta」の4件が2000年に世界遺産として登録されています。
特に1892〜1893年に建設されたタッセル邸はアール・ヌーヴォー様式最初の建物として評価され、その後のアール・ヌーヴォー建築の拡大に貢献しています。アール・ヌーヴォー様式は植物や虫など自然主義が特徴の一つでもあり、格子などにはトンボの羽、植物的アプローチを見ることができます。自然石と鉄の融合も見所で、見ていてわくわくする建築物になります。
3.ストックレー邸(Le palais Stoclet)
1905〜1911年に建設されたベルギーの銀行家「アドルフ・ストックレー(Adolphe Stoclet)」の邸宅。2009年6月に世界遺産に登録されています。
ウィーン分離派の中心メンバーの一人である「ヨーゼフ・ホフマン(Josef Hoffmann)」が設計を担当。金銭面、設計面で制約を受けることなく建設されたため、ストックレー邸は同派の中でも評価の高い建築物になっています。
曲線的なアール・ヌーヴォー建築全盛期において、こちらの建物は直線的なアプローチになっています。幾何学的な設計が今後のアール・デコ様式への移行、モダニズム建築へとつながっていきます。そのような存在価値が認められ、世界遺産として登録されています。
暫定リスト入りの世界遺産候補
世界遺産登録の前段階として、世界遺産に登録したい遺産を暫定リストに載せる必要があります。ブリュッセルでは以下の2つが2008年からリストに掲載されています。
今回は将来的な世界遺産登録をにらみ、暫定リストに掲載されている遺産についても紹介します。
ギャルリー・サンテュベール(Galeries Royales Saint-Hubert)
1846〜1847年に建設されたショッピングアーケード。オランダ人建築家「Jean-Pierre Cluysenaar(ジャン=ピエール・クリュズナール)」が設計を担当し、ベルギーにおけるネオクラシック様式の代表作として評価されています。
ギャルリー・ドゥ・ラ・レーヌ(Galerie de la Reine)、ギャルリー・ドゥ・ロワ(Galerie du Roi)、ギャルリー・デ・プランス(Galerie des Princes)の3つのセクションで構成されています。
ガラス張りの天井が美しい長さ約210メートルのアーケードには、カフェやレストラン、ギフトショップなど約70店舗が軒を連ねています。なかでも、世界最古のラグジュアリーレザーブランド「デルヴォー(DELVAUX)」の本店、ベルギー王室御用達のチョコレート店「Neuhaus(ノイハウス)」などが見所になります。
■ギャルリー・サンテュベールの内部
ブリュッセル最高裁判所(Palais de Justice de Bruxelles)
1866〜1883年に建設された歴史的建造物。ブリュッセル生まれの建築家「ジョセフ・ポウラエール(Joseph Poelaert)」が設計を担当。全長186メートル、全幅177メートル、全高116メートルの建物は、19世紀に建設された最大の建物として評価されています。
様式は折衷主義、ネオクラシック様式。老朽化したイエズス会の教会の跡地に建設され、中世の時代には犯罪者の絞首刑を行う場所でもありました。アドルフ・ヒトラーが建物を気に入り、研究させたという話もあります。
荷物チェックがありますが、内部には無料で入ることができます。高さ100メートル以上のエントランスホールが見所になります。実際に内部に入って見てみると、その規模感に圧倒されました。さらに、高台にあるため、裁判所前の広場からはブリュッセルの街並みが一望できます。建物には無料で入れ、王立美術館からも徒歩圏になるため、おすすめしたい観光地の一つです。
■ブリュッセル最高裁判所の内部
住所:Place Poelaert 1, 1000 Bruxelles(地図)
アクセス:地下鉄2、6番線の「Louise」駅から徒歩2分
ホームページ:https://justice.belgium.be/fr
滞在後記
ブリュッセルの世界遺産巡りはとても充実したものになりました。
特にグラン・プラス、ギャルリー・サンテュベールの夜景がおすすめです。きれいにライトアップされている点、治安面の問題が少ない点がおすすめポイントになります。
さらに、ヴィクトール・オルタ設計のアール・ヌーヴォー建築、ストックレー邸についても、建築物が景観に与える影響などを感じることができ、外観を見ているだけでも楽しい気持ちになりました。ブリュッセル観光の際はぜひ世界遺産巡りも楽しんでみてください。