ベルギー第2の都市「アントワープ」の世界遺産を紹介!
市庁舎のファサードにある紋章は何の紋章?見逃せない聖母大聖堂にあるルーベンスの絵画とは?現存する世界最古の印刷機が展示してある博物館もあった?!近代建築の巨匠「ル・コルビュジエ」が手掛けたギエット邸も必見です!
今回はアントワープにある世界遺産「ベルギーとフランスの鐘楼群」、「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」、「ル・コルビュジエの建築作品−近代建築運動への顕著な貢献−」を紹介します。ぜひ、アントワープ観光の参考にしてください。
ベルギーとフランスの鐘楼群
1999年に「フランドル地方とワロン地方の鐘楼群」として世界遺産に登録された後、2005年にフランスのノール=パ・ド・カレー地域圏などの23鐘楼が追加登録されています。追加登録によって「ベルギーとフランスの鐘楼群」に名称が変更され、アントワープからは以下の2つが登録されています。
- アントワープ市庁舎
- アントワープ聖母大聖堂
これから各世界遺産の特徴、歴史などを紹介していきます。
アントワープ市庁舎(Stadhuis van Antwerpen)
1561〜1564年に建設されたルネッサンス様式の市庁舎。建築家「コルネリス・フロリス・デ・フリーント(Cornelis Floris De Vriendt)」などが設計を担当。八十年戦争中(1568〜1648年)のアントワープ略奪(1576年)で建物は焼失しましたが、その後再建されています。
ファサード(建物の正面部分)の美しさが見所になります。建物の頂上部分にはワシが、その下にはマリア像があります。マリア像の下には紋章などがあり、左から「ブラバント公の紋章」、「正義の女神」、スペイン国王「フェリペ2世(1527〜1598年)」の紋章、「プルデンティアの女神」、「アントワープ辺境伯の紋章」になります。なお、現在も市庁舎として利用されているため、原則外観のみの観光になります(※グループツアーなどを除く)。
そのほか、市庁舎前にはブラボーの噴水「Standbeeld van Brabo(※写真手前)」があります。スヘルデ川沿いの城に住んでいた巨人「ドルオン・アンティゴーン(Druon Antigoon)」は城付近の川を通り過ぎる船に通行料を要求、支払わない者は手を切り落とされ、川に投げ捨てられていました。そこで、ローマ戦士「シルヴィウス・ブラボー(Silvius Brabo)」が反乱を起こし、ドルオン・アンティゴーンを殺害、その手を切り落とし、川に投げ捨てたという伝説があります。そのため、像の頂上にいるブラボーは手を投げ捨てようとしています。
■市庁舎前広場のギルドハウス群も圧巻!
市庁舎前広場「グロート・マルクト(Grote Markt)」のギルドハウス群も見所です。特にセント・ジョージ像が飾られた射手のギルドハウス(7番)が有名で、ギルドハウス群の中で最も高い建物になります。その左横の5番の建物は1579年に建設された樽製造者のギルドハウスになります。これらのギルドハウスについてもほとんどがアントワープ略奪で焼失しましたが、ハンス・フレーデマン・デ・フリース(Hans Vredeman de Vries、1527〜1604年)によって再建されています。
料金:無料(原則外観のみ)
住所:Grote Markt 1, 2000 Antwerpen, Belgique
最寄り駅:プレメトロ3・5・9・15番線「Groenplaats」駅から徒歩4分
アントワープ聖母大聖堂(Onze-Lieve-Vrouwekathedraal Antwerpen)
1352〜1521年に建設されたゴシック様式の大聖堂。9世紀頃に建設された小さな礼拝堂が起源。高さ約123メートルの尖塔がシンボル。ヤン・アペルマンス(Jan Appelmans、1352〜1411年)などが設計を担当。アニメ「フランダースの犬」の主人公であるネロが最後に見た絵画(ルーベンス作のキリスト降架)が飾られています。大聖堂内にはルーベンスを初め、フランドル地方の著名画家の絵画が多く飾られており、建設された当時のアントワープの繁栄ぶりを知ることができます。
以下の記事ではアントワープ聖母大聖堂の見所となる絵画、ステンドグラスをメインに紹介。ルーベンスの作品はもちろん、500ベルギー・フラン紙幣に肖像画が使用されていた「ベルナールト・ファン・オルレイ」、アンソニー・ヴァン・ダイクに絵画を教えた「ヘンドリック・ファン・バーレン」、ルーヴル美術館などが作品を所有している「クエンティン・マサイス」などの絵画を写真を付きで紹介しています。
料金:6ユーロ
住所:Handschoenmarkt 3, 2000 Antwerpen, Belgique
最寄り駅:プレメトロ3・5・9・15番線「Groenplaats」駅から徒歩3分
プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体
プランタン・モレトゥス印刷博物館は「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」として2005年に世界遺産登録され、博物館単独として登録された初めてのケースになります。ヨーロッパの出版文化に大きな貢献をしたことなどが評価されています。
プランタン・モレトゥス印刷博物館(Museum Plantin-Moretus)
クリストフ・プランタン(Christophe Plantin、1520〜1589年)が16世紀に設立した印刷会社が起源。当時のアントワープは出版業でも栄えており、設立当初は出版社向けに本の印刷などを手掛けていました。その後、語学に堪能だったヤン・モレトゥス(Jan Moretus)を雇います。プランタンの死後は娘婿になっていたヤン・モレトゥスが経営を引き継ぎ、後継者達は1867年まで出版業を続けました。
現存する世界最古の印刷機(2台)、ルーベンスの絵画、世界初の近代的世界地図を手掛けたアブラハム・オルテリウス(1527〜1598年)の世界地図、数学者「シモン・ステヴィン(1548〜1620年)」の十進法の書籍などが見所。また、活版印刷の道具類、三十六行聖書などの古書などを見ることができるほか、印刷技術の歴史を学ぶことができる点もポイントです。
料金:8ユーロ(12〜26歳、65歳以上は6ユーロ)、最終水曜日は無料
住所:Vrijdagmarkt 22-23, 2000 Antwerpen, Belgique
最寄り駅:プレメトロ3・5・9・15番線「Groenplaats」駅から徒歩4分
ル・コルビュジエの建築作品−近代建築運動への顕著な貢献−
近代建築の三大巨匠の一人「ル・コルビュジエ(Le Corbusier、1887〜1965年)」が手掛けた作品群、なかでも傑作とされる建物が2016年に「ル・コルビュジエの建築作品−近代建築運動への顕著な貢献−」として世界遺産に登録されています。東京の国立西洋美術館が選ばれたことで話題になりましたが、アントワープにあるギエット邸も選ばれています。これからギエット邸について紹介します。
ギエット邸(Maison Guiette)
ギエット邸は画家「ルネ・ギエット(René Guiette、1893〜1976年)」の依頼により、1926〜1927年に建設された3階建てのスタジオ兼住居。ギエットは1925年に開催されたアール・デコ博覧会でル・コルビュジエが手掛けたエスプリ・ヌーヴォー館をモデルに設計を依頼しています。
シトロアン住宅構想に沿ったデザインが見所になります。シトロアン住宅とは箱型の量産型住宅のことで、フランスの大衆車「シトロエン」の住宅版ということで命名されています。なお、建物内部を見学することはできませんが、周辺はアール・ヌーヴォー建築の建物が多く残るエリアになるため、建築好きの方はぜひ周辺も散策してみてください。
最寄り駅:プレメトロ2・6番線「Olympiade」駅から徒歩4分
滞在後記
アントワープ市庁舎については紋章の意味、ブラボーの噴水の意味を知った上で訪れるときっと見え方が違うと思います。特にブラボーの伝説についてはアントワープのシンボルになっており、チョコレート屋さんでは手の形をしたチョコレートがよく販売されています。また、ブリュッセルを訪問した際にも感じたことですが、やはりギルドハウス群はとても見応えがあります。アントワープのギルドハウスもブリュッセルのものに負けず劣らずといったところで、きっとみなさんを圧倒してくれると思います。
ギエット邸については世界遺産感の薄い建物でしたが、近代建築の方向性を決める一つの象徴的なものとして一見の価値はあると思います。ギエット邸周辺にはアール・ヌーヴォー建築の建物があるほか、テントーンステリングスウェイク(Tentoonstellingswijk)地区にも多くの特徴的な建築物があるため、気になる方は訪れてみてください。
ギエット邸を除き、その他の世界遺産はアントワープ中心部にあり、主要観光地にもなっています。訪問する手間は掛からないため、アントワープ観光の際はぜひ訪れてみてください!
※上記の世界遺産の場所については以下のグーグルマップ(黄緑色)を確認してください。