プラハでシナゴーグ巡りをしてみませんか?
豪華な内装装飾が見所のシナゴーグがある?!神聖ローマ皇帝の宮廷ユダヤ人が資金提供をしたシナゴーグはどこ?!ユダヤ人の日常生活が垣間見れるシナゴーグとは?
今回はチェコ共和国の首都「プラハ」にあるシナゴーグ5ヵ所を紹介します。シナゴーグとはユダヤ教の会堂(集会を行う大きな建物)のことで、今回紹介するシナゴーグは博物館的に利用されている所が多く、ユダヤ教について理解を深めることができる点がポイントです。
なお、今回紹介するシナゴーグ5ヵ所のうち、以下の4ヵ所は共通券(400チェココルナ)で入場することができます。
- スペインシナゴーグ
- マイゼル・シナゴーグ
- ピンカス・シナゴーグ(旧ユダヤ人墓地含む)
- クラウス・シナゴーグ(セレモニーホール含む)
それでは、これからおすすめのシナゴーグを紹介していきます。おすすめ度については、シナゴーグとしておすすめできるかを考慮しています。よって、おすすめ観光地のおすすめ度とは異なりますのでご了承ください。
プラハのおすすめシナゴーグ5選
1.スペインシナゴーグ(Španělská synagoga)
■おすすめ度:★★★★(5段階評価)
スペインシナゴーグは、プラハのブランド店街であるパジージュスカー通り近くに位置するシナゴーグです。もともとプラハ最古のシナゴーグの一つがありましたが、収容人数拡大のため1868年に現在の建物に建て替えられました。
ムーア様式の外観が特徴的ですが、何と言ってもスペインシナゴーグの見所は内部装飾の美しさです。ページトップの写真はスペインシナゴーグの内部になり、アラベスク模様のイスラム芸術に影響を受けたデザインになっています。なお、スペインシナゴーグは1階、2階で構成されており、ユダヤ教の歴史や資料、プラハに住んでいたユダヤ人に関する資料などが展示されています。詳細については、以下の記事をご覧ください。
2.マイゼル・シナゴーグ(Maiselova synagoga)
■おすすめ度:★★★(5段階評価)
マイゼル・シナゴーグはユダヤ人街に位置し、ユダヤ人銀行家のモルデカイ・マイゼル(Mordechaj Maisel、1528年〜1601年)が資金を提供し、1590年〜1592年に建設されたシナゴーグ。モルデカイ・マイゼルは神聖ローマ皇帝「ルドルフ2世(1552年〜1612年)」の宮廷ユダヤ人(※)でした。建物は17世紀、20世紀に再建、2014年〜2015年にかけて改装が行われています。現在の様式はネオゴシック様式です。
第二次世界大戦時におけるナチス占領中はユダヤ人の財産を保管する場所として使用された後、一時閉鎖された時もありますが、スペインシナゴーグと同じくビロード革命により1996年に再度公開されています。見所はチェコにおけるユダヤ人入植の起源、関連資料などになります。
※宮廷ユダヤ人とは、キリスト教徒の貴族相手に資金の運用、貸付などをおこなったユダヤ人銀行家のこと。当時のキリスト教(教会)は利息徴収を禁止していたため、代わりにユダヤ人が貸付などを行っていました。
■滞在後記
筆者は平日の午前10時半頃に訪問。多くの学生が訪れていたことに驚きました。スペインシナゴーグとは異なり、豪華な内部装飾はなく、博物館的な要素の強い場所だと感じました。ただし、展示物は印刷物やレプリカが多いです。トイレは入って左側の展示室の奥にありますが、男女共同の空間になっており、同じ空間の個室で男女が分けられています。そのため、男女問わず嫌な気分になる方もいるかもしれないので注意してください。なお、男性用の小便器はありません。
■エチェズケル・ランダウ(1713年〜1793年)が寄贈した冠
3.ピンカス・シナゴーグ(Pinkasova synagoga)
■おすすめ度:★★(5段階評価)
ピンカス・シナゴーグは、ユダヤ人銀行家のアハロン・メシュラム・ザルマン・ホロヴィッツ(Aharon Mešulam Zalman Horowitz、1470年〜1545年)の資金提供により、1535年に建設されたシナゴーグ。ユダヤ人街に位置し、旧ユダヤ人墓地に隣接しています。シナゴーグ内の壁にはチェコのホロコースト犠牲者の名前が刻まれています。また、テレージエンシュタットに収容されていたユダヤ人の子供達が描いた絵が名前、生年月日、亡くなった日(もしくは生存)などと共に飾ってありました。
■滞在後記
筆者は平日の午前11時過ぎに訪問。中に入る際、頭に乗せるキッパ(帽子のようなもの)をもらい、頭に乗せます(男性のみ)。中に入ると、特徴的な模様に目を奪われました。よく見てみると、上記の通り、ホロコーストで亡くなった方達の名前が生年月日などと共に刻まれていました。こちらのシナゴーグは犠牲者を追悼するという意味合いがあるのかもしれません。2階に上がると、子供が書いた絵がいくつも飾ってありました。戦争時に亡くなった子、奇跡的にも生き残った子、様々な境遇の子供たちの絵が飾ってありました。
旧ユダヤ人墓地(Starý židovský hřbitov)
1439年〜1786年にかけて使われたユダヤ人墓地。現存する世界最古のユダヤ人墓地の一つ。上記のシナゴーグ建設時の資金提供者であるモルデカイ・マイゼル、アハロン・メシュラム・ザルマン・ホロヴィッツなどの有力者などが埋葬されています。ぶどうの彫刻が施された墓石、王様の墓のような墓石、今にも崩れ落ちそうな墓石、様々な墓石が数多く立ち並んでいました。
■モルデカイ・マイゼルの墓
4.クラウス・シナゴーグ(Klausová synagoga)
■おすすめ度:★★★(5段階評価)
クラウス・シナゴーグは、モルデカイ・マイゼル(1528年〜1601年)が設立したシナゴーグ、私立学校などが入る複合施設跡に建設されたシナゴーグです。1689年の大火でシナゴーグが焼失し、シナゴーグのラビ(宗教的指導者)だったシェロモ・カリシュ・コーエン(Šelomo Chališ Kohen)が新しいシナゴーグを建設(1694年に完成)、19世紀後半に再建されています。
見所は、ユダヤ人の宗教儀式に関する展示物、ユダヤ人家族の日常生活を感じることができる展示物になります。祈りが集められた本、ユダヤ教の年中行事の一つ「ハヌカ」で使われるランプ、過越祭で使用されるグラスのほか、出産や結婚に関連する展示物などがあります。なお、クラウス・シナゴーグの隣にあるセレモニーホール(共通券で入場可)でも同様の展示を見ることができます。
■滞在後記
マイゼル・シナゴーグと同様に、こちらも人の多さに驚きました。セレモニーホールや旧ユダヤ人墓地に隣接しているとはいえ、違和感を感じるほどの混雑でした。こちらも博物館的要素の強いシナゴーグになり、2階(現地表記は1階)にはユダヤの人達の生活用品(食器、キャビネット)などが展示されています。資料類はコピーのものもありますが、昔のユダヤの人達の生活を垣間見ることができる良いシナゴーグだと思います。
■ユダヤ人の生活道具、結婚指輪
5.旧新シナゴーグ(Staronová synagoga)
■おすすめ度:★★(5段階評価)
1270年に建設された現存するヨーロッパ最古のシナゴーグの一つ。もともと新シナゴーグ、もしくは大シナゴーグと呼ばれていましたが、16世紀に新たなシナゴーグが建てられたため、旧新シナゴーグと呼ばれるようになりました。1716年に神聖ローマ皇帝「カール6世」の命により修復されたほか、19世紀後半には聖リュドミラ教会などを設計したヨゼフ・モッカーによって修復されています。
最後に
今回紹介したシナゴーグ以外では、写真の1905年〜1906年にかけて建設されたジュビリーシナゴーグ(Jeruzalémská synagoga)もあります。ムーア様式の特徴的な外観に、当時流行っていたアール・ヌーヴォー様式の装飾が美しいシナゴーグです。
なお、スペインシナゴーグの美しさに目が行きがちですが、それだけでチケットを購入すると後悔すると思います。ユダヤ教に興味のない方にとって、共通券の料金は高いと感じるためです。スペインシナゴーグは単独チケットが販売されておらず、共通券を購入しなければなりません。共通券は、入場できる各施設を巡り、ユダヤ教及びプラハで暮らしていたユダヤ人の歴史を学ぶことに意味があると思います。学ぶ気持ちの無い方は見送られた方が無難です。
以上、こちらの記事を通して、プラハ観光でシナゴーグを訪れるべきか考えるきっかけにして頂けると嬉しいです。今回紹介したシナゴーグの場所は以下のグーグルマップをご覧ください。