エストニアの首都「タリン」にある「タリン歴史地区」は、中世の街並みが奇跡的に保存された世界遺産として知られ、まるでタイムスリップしたかのような風景が広がります。赤い屋根の家々、石畳の通り、教会や城壁が調和し、訪れる人々を魅了しています。
こちらの記事では、そんなタリン旧市街の中でも特におすすめの観光スポットを10カ所厳選して紹介。歴史的建造物から絶景ポイント、隠れた名所まで、タリンを初めて訪れる方にもリピーターにも役立つ情報をお届けします。
タリン歴史地区について
タリン歴史地区はタリン旧市街に位置し、1997年にユネスコの世界遺産に登録されています。タリンは13世紀にデンマーク王「ヴァルデマー2世」が城塞を築いて以来、本格的に都市として発展。1346年にデンマーク王「ヴァルデマー4世」がタリンを含む北エストニアをドイツ騎士団に売却し、ハンザ同盟の有力な交易拠点として発展しました。
トームペア(上町)の城と大聖堂、下町の狭く曲がりくねった路地、教会群、商人の邸宅、城壁や塔、ギルドホールなどが高い完成度で保存されており、13〜16世紀の都市構造がほぼ原形をとどめています。また、市域を取り囲む防御壁と塔が数多く現存しています。
タリン歴史地区に位置する観光スポット10選
1. トームペア城(Toompea loss)
トームペア城はタリン旧市街の高台「トームペアの丘」に位置する要塞で、エストニアの政治と支配の象徴です。ドイツ騎士団、スウェーデン、ロシア帝国と支配者が交代しながら増改築が重ねられました。
中世の石造りの防壁や塔に加え、18世紀に加わったロシア風バロック様式のピンク色の宮殿(※写真右)が特徴的です。現在はエストニア議会(Riigikogu)が入居しており、政治の中心地として機能しています。見所は「のっぽのヘルマン(※写真左)」と呼ばれる塔で、エストニア国旗が掲げられており、国家の誇りを象徴しています。
2. 市庁舎広場(Raekoja plats)
市庁舎広場は、タリン旧市街の中心に位置する広場。中世以来の公共広場で、都市の政治・商業・社交の拠点として機能してきました。広場の南側に建つゴシック様式のタリン市庁舎は、13世紀からの歴史を持ち、現存する市庁舎の建物は1402年から1404年にかけて建てられ、ヨーロッパ最古級の市庁舎建築として知られます。
タリン市庁舎の尖塔の上にはタリンの守護像「オールド・トーマス」が立ち、市民を見守っています。広場にはかつてギルドや商館、薬局が並び、現在もレストランやカフェ、土産物店が軒を連ね、観光客を中心に賑わいを見せています。
3. アレクサンドル・ネフスキー大聖堂(Aleksander Nevski katedraal)
アレクサンドル・ネフスキー大聖堂は、タリン旧市街のトームペアの丘に建つロシア正教会の大聖堂。ロシア帝国時代の1894~1900年に建設されました。ネオ・ビザンティン様式の建築で、黒い玉ねぎ型ドームと精緻なモザイク装飾が特徴です。ソ連時代には取り壊す計画もありましたが実現せず、現在は修復を経てタリンの代表的観光スポットになっています。
4. 聖母マリア教会(Toomkirik)
聖母マリア教会は、タリン旧市街のトームペアの丘に位置するエストニア最古の教会。13世紀初頭に木造教会として建立されました。14世紀以降に石造化され、ゴシック様式とバロック様式が融合した現在の姿に整えられました。宗教改革後はルター派の主教座聖堂となり、貴族の墓所としても重要な役割を果たしました。内部にはエストニアやバルト・ドイツの貴族たちの美しい墓碑や紋章が数多く残されています。
5. ヴィル門(Viru Väravad)
ヴィル門は、タリン旧市街の東側入口に位置する中世の城門跡。城壁の一部として14世紀に建設されました。当初は堅牢な防衛施設でしたが、19世紀後半に都市の近代化に伴い城壁の大部分が撤去され、現在は2本の円塔だけが残っています。これらの塔は旧市街のシンボル的存在であり、美しい花壇や石畳の通りとともにタリン観光の玄関口として親しまれています。門をくぐるとレストランやカフェ、土産物店が並ぶヴィル通りが広がり、賑やかな旧市街散策のスタート地点となっています。
6. エストニア騎士団の家(Eestimaa rüütelkonna hoone)
エストニア騎士団の家は、タリンのトームペアの丘に建つ歴史的建造物。現在の建物は1845〜1848年にかけて建設されたネオ・ルネサンス様式の建物。エストニア騎士団は中世から1920年の土地改革までエストニアを支配していた有力な支配層で、この建物はその権威の象徴でもあります。現在は国家会議場として利用されています。
7. ブラックヘッド会館(Mustpeade Maja)
ブラックヘッド会館は、タリン旧市街にある14世紀初頭からの歴史を持つ中世ギルドの建物。現在のファサードは16世紀末にルネサンス様式で再建されたもの。リヴォニア(現在のラトビア、エストニア)の未婚外国商人などによる同盟組織「ブラックヘッド兄弟団」の本拠地として使われ、内部では宴会や商談、文化行事が行われていました。ギルドの歴史と華麗な装飾が楽しめる、タリン中世文化の象徴的な建物です。
8. 職人の中庭(Meistrite Hoov)
職人の中庭は、タリン旧市街の隠れた名所で、中世の雰囲気を色濃く残す小さな中庭です。かつては職人たちが作業場として使っていた場所で、現在も石畳や古い建物が当時の面影を伝えています。中庭内には地元の工芸職人のアトリエやショップ、ギャラリー、カフェが集まり、ガラス製品や陶器、手作り雑貨などの手工芸品に出会えるのが魅力。手作りのお土産などを購入したい方におすすめの場所です。
展望台
9. パトクリ展望台(Patkuli vaateplatvorm)
パトクリ展望台は、トームペアの丘の北端に位置し、タリン旧市街の赤い屋根、教会の尖塔、城壁、そしてフィンランド湾までを一望できる絶景スポットです。特に中世の塔が並ぶ景観は圧巻。筆者が訪れた際は人が少なく、落ちつて景色を楽しむことができましたが、シーズンによっては混雑する可能性があります。落ち着いてタリンの景色を楽しみたい方は午前中の訪問がおすすめです。
10. コフツオッツァ展望台(Kohtuotsa vaateplats)
コフツオッツァ展望台は、トームペアの丘の北斜面にある絶景スポット。旧市街の赤屋根と教会群、フィンランド湾などの景色が楽しめます。特に旧市街の建物との距離が近い点が特徴。身近に旧市街の建物を感じたい方はコフツオッツァ展望台、街並み全体を見渡したい方はパトクリ展望台がおすすめです。双方とも近い場所にあるため、合わせて訪れて違いを感じてみてください。個人的にはパトクリ展望台の方が好みでした。
番外編
タリン・フェリーターミナル
筆者はタリンからフィンランドの首都「ヘルシンキ」にフェリーで行きました。Flix Busでチケットを購入し、メールで搭乗前にチケットを発券するようにと伝えられました。Dターミナル内の発券機(※写真右)で、メール内にあった番号などを入力するだけでしたので、面倒ではありませんでした。なお、港では無料のトイレが利用できるほか、飲料水も無料でした。
その他観光スポット
- ロシア大使館
- ライヒマンの家
■ロシア大使館(Venemaa Föderatsiooni Suursaatkond)
ロシアによるウクライナ侵攻に抗議する横断幕などが掲げられ、近くには警備車両が配置されるなど、ロシア大使館周辺は少し異様な光景でした。
■ライヒマンの家(Reichmanni maja)
ライヒマンの家は、タリン旧市街に位置する1908〜1909年に建設されたアール・ヌーヴォー様式の歴史的建造物。裕福なユダヤ系商人「ラインホルト・ライヒマン」によって建てられました。
- 自由広場
- エストニア独立戦争戦勝記念碑
自由広場は、タリン旧市街の南側に位置する広大な公共広場で、エストニアの独立と自由を象徴する重要な場所です。広場中央にはエストニア独立戦争の戦没者を追悼する自由の記念碑が立ち、市民の集会やイベントが頻繁に開催されます。周囲には劇場や博物館、政府機関があり、歴史と現代が融合したタリンの文化的中心地として親しまれています。
■カドリオルグ宮殿(Kadrioru loss)
カドリオルグ宮殿は、タリンのカドリオルグ公園内にあるバロック様式の宮殿。ロシア皇帝「ピョートル1世」の命により、夏の離宮として18世紀前半に建設されました。現在はエストニア美術館の西洋美術部門として利用されています。
最後に
タリン歴史地区には、城や教会、趣ある広場から静かな中庭まで、さまざまな魅力が凝縮されています。歴史を感じながら散策できるだけでなく、カフェや工芸店、展望台など、旅の楽しみが随所に散りばめられているのも特徴です。
また、都市全体がコンパクトにまとまっているため、徒歩で効率よく巡れるのも嬉しいポイント。観光地としての利便性と中世の雰囲気が共存するタリン旧市街は、エストニアを訪れるなら外せないエリアです。
今回紹介したスポットを入口に、自分だけのお気に入りの場所を探してみるのもおすすめです。歴史、文化、景色、そして静けさが織りなすタリンの街並みは、きっと旅の記憶に深く刻まれることになると思います。
なお、今回紹介した場所は以下のグーグルマップで確認してください。