バルト三国の一つラトビアの首都「リガ」は、「リガ歴史地区」として世界遺産に登録された美しい街並みが魅力です。中世の面影を残す石畳の旧市街や、ユーゲント・シュティール(アール・ヌーヴォー)建築が軒を連ねるエリアなど、街全体がまるで屋外博物館とも言え、街歩きを楽しみたい都市です。
この記事では、初めてリガを訪れる方におすすめしたい、旧市街を中心とした観光スポットを10カ所厳選して紹介。市庁舎広場やリガ大聖堂、自由の記念碑といった名所から、ユニークな「猫の家」やラトビア科学アカデミーまで、見どころを網羅しています。文化と歴史が交差するリガの魅力を、ぜひ体感してみてください。
世界遺産「リガ歴史地区」
リガ歴史地区(Historic Centre of Riga)は、1997年にユネスコの世界遺産に登録されています。旧市街を中心とするエリアで、中世〜19世紀にかけて形成された都市構成が評価されています。
バルト海貿易の拠点として13〜15世紀に繁栄したハンザ同盟都市の街路網や石造建築群が保存されているほか、さらに19〜20世紀の新興地区にはアール・ヌーヴォー建築や新古典主義建築が数多く残されています。
そこで今回は、旧市街で押さえておきたい観光スポット、アール・ヌーヴォー建築が密集するアルベルタ通りなどその他エリアの観光スポットを紹介します。
旧市街の観光スポット
1. 市庁舎広場(Rīgas Rātslaukums)
リガ旧市街の中心に位置する市庁舎広場は、13世紀末に市場として誕生し、ギルドや市庁舎が集まる行政と商業の中心地として発展しました。第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けましたが、1990年代以降に歴史的建築が忠実に復元され、現在は美しい景観が広がっています。
・広場の見所は?
写真の市庁舎のほか、ブラックヘッドハウス、聖ローランドの像が見所。その他、観光案内所やギフトショップなどもあり、リガ観光を始めるのに最適な場所だと言えます。なお、1510年にラトビアで初めてクリスマスツリーが設置された場所としても知られています。
2. ブラックヘッドハウス(Melngalvju nams)
ブラックヘッドハウスは、14世紀初頭にリヴォニア(現在のラトビア、エストニア)の未婚外国商人などによる同盟組織「ブラックヘッド兄弟団」の集会所として建設されました。ゴシック様式などによるファサードが特徴で、リガを代表する歴史的建造物の一つです。
・なぜ入口に黒人男性が描かれているのか?
第二次世界大戦で完全に破壊されましたが、1999年に精巧に再建され、現在は博物館などとして利用されています。なお、入口には聖母マリアと、エジプト出身のキリスト教徒でブラックヘッド兄弟団の守護聖人の聖モーリスが描かれています。
3. リガ大聖堂(Rīgas Doms)
リガ大聖堂は、1211年にリヴォニア司教アルベルトによって建てられた教会。ロマネスク様式、バロック様式が融合した建築様式が特徴で、リガ旧市街を象徴する存在になっています。内部には歴史あるステンドグラスや説教壇があり、特に1882〜1883年にかけて造られたパイプオルガンは音響の美しさで有名です。その一方、入場料の高さがマイナス点。リガのランドマークの一つとして、外観だけでも見ておくべき建物として今回は紹介しています。
4. 聖ペテロ教会(Rīgas Svētā Pētera baznīca)
聖ペテロ教会は、13世紀初頭の文献で言及されている歴史ある教会。建築様式はゴシック、ロマネスク、バロックが融合しており、特に高さ約123メートルの尖塔が街のランドマークとして知られています。尖塔は何度も落雷や戦争で破壊されましたが、その都度再建され、現在の姿は1973年の修復によるものです。
・暴徒による破壊活動で巨匠作品が焼失
なお、アルブレヒト・デューラー(1471〜1528年)が描いた祭壇画がありましたが、1524年にルター派の暴徒による破壊活動で焼失しています。塔からは旧市街やダウガバ川を一望できるため、人気の観光スポットとなっています。
5. リガ城(Rīgas pils)
リガ城は、1330年にリヴォニア騎士団の本拠地としてダウガバ川沿いに築かれた要塞。16世紀以降は騎士団解体後にポーランド・リトアニア、スウェーデン、ロシア帝国と支配勢力が移り変わり、各国の行政拠点として機能しました。1922年以降はラトビア大統領の官邸として利用されています。一部はラトビア国立歴史博物館として公開されており、内部見学が可能になっています。
6. 三人兄弟の家(Trīs Brāļi)
三人兄弟の家は、リガ最古の住宅建築群。写真右のMazā Pils iela 19(小城通り19番地)の建物が最も古く、15世紀末から16世紀初頭にかけて建設されています。パン屋によって建てられたと考えられています。マニエリスム様式に影響を受けた写真中央の建物(19番地)は1646年に建てられています。バロック様式の写真左の建物(21番地)は1718年に建てられています。三人兄弟の家は現在、ラトビア建築博物館として一般公開されています。
7. 猫の家(Kaķu nams)
猫の家は、1909年に建てられた建物。尖塔の上に設置された猫の像が名前の由来。建築家「フリードリヒ・シェッフェル(Frīdrihs Šefels、1865〜1913年)」が設計を担当。中世風の外観にアール・ヌーヴォー装飾が施された印象的な建物です。
・猫伝説を楽しむ観光スポット
ドイツ人が影響力を持つ大ギルドへの不満を抱いた建築主の富裕商人(ラトビア人)が、ギルドを侮蔑する意味で尻尾を大ギルド会館に向けて猫像を設置したと伝わっています。内部見学はできませんが、1階部分には飲食店「Gastro Pub Duvel’s」が入っています。外観と猫伝説を楽しむ観光スポットになっています。
その他エリアの観光スポット
8. 自由の記念碑(Brīvības piemineklis)
自由の記念碑は、旧市街近く自由広場(Brīvības laukums)に位置するラトビア独立戦争(1918〜1920年)で亡くなった人々を追悼するために建てられた記念碑。高さ42メートルの記念碑は、コンペで選ばれた彫刻家「カーリス・ザーレ(Kārlis Zāle、1888〜1942年)」の案に従って建てられ、1935年に完成しました。
最上部の「自由の女神」は3つの金星を掲げています。ソ連時代にも撤去を免れ、民族独立運動では象徴的な集会場となりました。現在は自由を象徴する記念碑として観光名所の一つになっています。
9. ラトビア科学アカデミー(Latvijas Zinātņu akadēmija)
ラトビア科学アカデミービルは、1951~1961年に建設されたラトビア初の超高層建築物(高さ108メートル)。リガ工科大学本館等を手掛けたオスヴァルズ・ティールマニス(Osvalds Tīlmanis、1900〜1980年)などが設計を担当。
建築様式はスターリン様式で、モスクワのセブンシスターズ(モスクワ大学本館など)の建物によく似ています。17階の展望台(約65m)からは旧市街やダウガバ川を見渡すことができます。特徴的な建物はリガのランドマークの一つとして、観光名所になっています。
10. アルベルタ通り(Alberta iela)
アルベルタ通りは、リガのユーゲント・シュティール(アール・ヌーヴォー)建築の宝庫として知られる美しい通り。リガ建都700周年を記念して1901〜1908年にかけて整備され、リヴォニア司教「アルベルト(1165年頃〜1229年)」が名前の由来になっています。
コンスタンティンス・ペクシェーンス、ミハイル・エイゼンシュテインなど複数の建築家により、数年の間に豪華で装飾豊かな建物群が建設されました。世界遺産「リガ歴史地区」の構成要素として文化的価値が高く、建築ファン必見の観光地になっています。なお、アルベルタ通りなどにあるリガの注目すべき建築物の記事を別途作成しています。以下のボタンからぜひご覧ください。
番外編
- スウェーデン門(Zviedru vārti)
- 火薬塔(Pulvertornis)
■スウェーデン門(Zviedru vārti)
スウェーデン門は、1698年に建設されたリガ旧市街に現存する唯一の中世城壁の門。スウェーデン統治時代に造られたことが名前の由来で、かつては兵士の通用門として利用されていました。現在は歴史的雰囲気が漂う観光名所となっています。
■火薬塔(Pulvertornis)
火薬塔は、リガ旧市街に残る中世の防衛施設。1330年に「砂の塔」として言及され、1621年のスウェーデン軍の侵攻で破壊された後、1650年に現在も残る塔が建てられました。
■治安について
旧市街の治安は安定している印象を受けましたが、Wellton Centrum Hotel & SPA付近の空き地で朝から酔っ払いがたむろしていたのが気になりました。中身が残っている酒瓶がないかゴミ箱を漁っている浮浪者も数人いたため、近くを通る際はじろじろ見ない、速やかに通り過ぎる、女性一人の場合は通りで一人にならないといった対策をすれば問題ないと思います。旧市街は飲み屋が多いため、夜出歩く際は酔っ払いに注意してください。
最後に
リガは、中世の風情を色濃く残す旧市街と、個性豊かな建築が共存する、バルト三国屈指の歴史都市です。
世界遺産「リガ歴史地区」では、石畳の路地や教会、ユーゲント・シュティール建築など、街を歩くだけでタイムスリップしたかのような感覚を味わえるのも魅力です。加えて、博物館や記念碑、美しい景観スポットなど見所が豊富で、文化や芸術に興味のある方にもおすすめの旅行先と言えます。
今回紹介した観光スポットは徒歩圏内に集まっており、1日あれば主要な名所を無理なく巡ることができます。旧市街にはラトビア料理を楽しめるレストランや可愛らしい雑貨店も点在し、街歩きの合間に立ち寄るのも楽しみのひとつです。リガを訪れれば、華やかなヨーロッパの歴史とラトビア独自の文化の融合にきっと魅了されるはずです。
なお、今回紹介した場所は以下のグーグルマップで確認してください。